教育訓練休暇給付金とは──2025年10月開始、学びのために休む人への新制度

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この記事の結論

教育訓練休暇給付金は、会社を辞めずに無給の休暇を取って学ぶ人に、失業給付(基本手当)に相当する額を支給する制度です。対象となる教育訓練には大学院が明記されており、海外大学院での修士号取得も含まれます。ただし受給には、勤務先の就業規則等に休暇制度があることが前提です。制度を導入している企業は7.5%にとどまる一方、「勤務先に制度があるか分からない」労働者は63.2%にのぼります。まず確認すべきは、自社の就業規則です。

働きながら通うのではなく、一定期間仕事を離れて大学院で学びたい。そのとき最大の障壁になるのは収入です。2025年10月に始まった教育訓練休暇給付金は、この期間の生活費を雇用保険から支給する制度です。本記事では、制度の中身と、実際に使うために必要なことを整理します。

1. 教育訓練休暇給付金とは

教育訓練休暇給付金は、労働者が離職せずに教育訓練に専念するため自発的に休暇を取得する場合に、その期間の生活費を保障する制度です。失業給付(基本手当)に相当する給付として、賃金の一定割合が支給されます(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

制度の骨格は次の3点です。

  • 会社に在籍したまま利用する
  • 就業規則等に基づく、連続30日以上の無給の休暇を取得する
  • その期間について、基本手当に相当する額を受け取る

対象は雇用保険の一般被保険者で、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者は対象外です。厚生労働省は活用例として、外国企業とのやりとりが必要な部署への異動を希望して語学習得に専念するケース、IT企業に勤める人が上位資格の取得のために休暇を取るケースを挙げています(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

2. 大学院は対象に明記されている

対象となる教育訓練は、次の3つです(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

  1. 学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校又は各種学校が提供する教育訓練等
  2. 教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等
  3. 職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等)

大学院は1つめに明記され、3つめには海外大学院での修士号取得が含まれます。教育訓練給付金と違い、厚生労働大臣の指定講座に限定されていない点が重要です。

進学予定の課程が対象になるかは、事前にハローワークで確認できます(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

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指定講座に該当する課程であれば、受講費用の一部を給付する教育訓練給付金をあわせて利用できます(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

3. いくら、何日受け取れるか

給付日額は、原則として休暇開始日前6か月の賃金日額に応じて算定されます。失業給付と同じ算定方法で、年齢によっても変動します。厚生労働省が示す支給額のイメージは次のとおりです(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

額面月収 給付月額
250,000円 約170,000円
350,000円 約195,000円
450,000円 約225,000円

額面月収から便宜的に算出した給付日額に30日を乗じたもので、実際の額は賃金支払状況、年齢、認定状況等により異なります。

給付日数は雇用保険の加入期間に応じて、5年以上10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日です。受給期間は休暇開始日から1年間で、所定給付日数が残っていても期間を過ぎると支給されません。ただし受給期間中に妊娠、出産、育児、疾病、負傷などの事由が生じた場合は、受給期間を延長できる場合があります(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

4. 受給に必要な要件

対象者の要件は2つです。

  • 休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があること
  • 休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間があること(離職期間が12か月以内なら前後を通算可。ただしその間に失業給付等を受けた場合は不可)

休暇の要件は次のとおりです。

  • 就業規則や労働協約等に規定された休暇制度に基づくこと
  • 本人が自発的に希望し、事業主の承認を得ていること(業務命令による休暇は対象外)
  • 30日以上連続した無給の休暇であること

就労した日や、有給休暇・育児休業等を取得した日は支給されません。一方、無給の休暇中に事業主から受講費用の一部補助などの手当が支給されても、就労の対価ではないため、それを理由に不支給にはなりません(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。会社の学費補助と併用できるということです。加入期間の要件を満たしているかは、休暇開始前にハローワークで確認できます(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

5. 分割して取得できる

受給期間と所定給付日数の範囲内であれば、休暇を複数回に分けて取得しても支給を受けられます(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。集中講義の期間や修士論文の執筆期に休暇を充てる設計も、制度上は可能です。ただし受給期間は初回の休暇開始日から1年間で、2年目以降に持ち越すことはできません。

休暇の期間や内容に変更が生じた場合は、教育訓練休暇変更確認票により改めて事業主の合意を得たうえで、本人がハローワークに申出を行うことで変更できます(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

6. 勤務先に休暇制度がない場合にやること

受給の前提になるのが、勤務先の制度です。この給付金は、就業規則等に規定された休暇制度に基づく休暇でなければ対象になりません。休暇の取得を拒まれた場合も受給できません(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

教育訓練休暇制度を導入している企業は7.5%で、前回調査より0.5ポイント低下しています。導入予定の企業は9.1%、予定なしが83.4%です(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」)。さらに導入企業のうち、30日以上の長期休暇が取得できるのは28.0%にとどまります。最も多いのは「長期休暇の取得はできないが、有給休暇として取得できる」の56.4%で、制度があっても給付金の要件である30日以上連続の無給休暇に対応していない設計が多数派です(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査 調査結果の概要」)。

一方、30日以上の教育訓練休暇について、労働者の回答は次のとおりです(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査 調査結果の概要」)。

勤務先の制度の状況 割合
制度があるか分からない 63.2%
制度がない 28.2%
制度はあるが、利用したことはない 3.8%
制度があり、利用したことがある 0.8%

6割を超える人が、自社に制度があるかを把握していません。「制度がない」と答えた人の2倍以上です。なお、この制度の利用を希望する人は17.3%でした(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査 調査結果の概要」)。打ち手は3つあります。

打ち手1:名称にとらわれず就業規則を確認する

「教育訓練休暇制度」という名称である必要はなく、教育訓練を受けるために利用可能な休暇制度であれば対象になります(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。厚生労働省の規程例には、サバティカル休暇制度も挙げられています。ただし就業規則で教育訓練の内容を限定している場合、対象とならない場合があります(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

打ち手2:会社側の助成金とあわせて人事に相談する

教育訓練休暇制度を導入する予定がない企業に理由を尋ねた結果は次のとおりです(複数回答)(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査 調査結果の概要」)。

導入予定がない理由 割合
代替要員の確保が困難であるため 46.3%
制度自体を知らなかったため 37.2%
労働者からの制度導入の要望がないため 31.0%
制度導入のメリットを感じないため 22.3%

2位と3位は、反対ではなく情報が届いていないことを示しています。

会社側には、人材開発支援助成金(人への投資促進コース)があります。長期教育訓練休暇制度を導入し、実際に労働者に適用した事業主に、次の助成が設けられています(厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内」)。

助成内容 中小企業 大企業
経費助成 20万円(要件を満たす場合+4万円) 同左
賃金助成(有給休暇の場合、1時間あたり) 1,000円 800円(要件を満たす場合+200円)

経費助成は事業主単位で一度限りの支給です。個人の希望としてではなく、制度導入の提案として持ち込むことができます。

打ち手3:専門窓口を活用する

就業規則への導入方法は、全国47都道府県の働き方改革推進支援センターで相談できます。また、就業規則の規定が要件に合致しているかは、休暇開始前に事業主がハローワークで確認できます(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

7. 申請前に知っておくべき制約

給付金を受けると、休暇開始日より前の被保険者期間や加入期間はリセットされ、一定期間は失業給付などを原則受給できなくなります(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。修了後に転職を考えている場合は、資金計画に織り込む必要があります。

ただし、育児休業等給付・介護休業給付のみなし被保険者期間と、教育訓練給付金の支給要件期間には影響しません(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

また、休暇中に就労した日は給付されず、副業も同様です。週1回の出勤といった形も認められません。指揮命令によらない人事担当者や同僚との軽微なやりとりは、一般に就労には当たらないとされています(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

休暇の取得を理由に解雇、雇止め、賃金の引き下げ等の不利益な取扱いを受けた場合は、都道府県労働局等の総合労働相談コーナーが相談先として案内されています(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

8. 手続きと期限

手続きは事業主と労働者の双方が行います。

  1. 労働者が事業主に申出を行い、合意のうえで教育訓練休暇取得確認票を提出する
  2. 休暇開始後、事業主が休暇開始日の翌日から10日以内に賃金月額証明書等をハローワークに提出する
  3. 労働者が休暇開始日から30日以内に、交付された支給申請書等をハローワークに提出する(受給資格決定)
  4. 以後、30日ごとに認定申告書等を提出する

提出先は、事業主が事業所の所在地、労働者が住居所を管轄するハローワークです。

教育訓練休暇取得確認票には、休暇の期間、教育訓練の目標、教育訓練の内容(施設等の名称・講座名、受講開始・修了予定年月日等)、実施方法(対面・通信講座等)を記載します(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。 必要書類の一覧は、厚生労働省のリーフレットにチェックリストとして掲載されています。なお、不正受給の場合は受給額の返還に加えて返還額の2倍の納付を命じられ、詐欺罪として処罰されることがあります(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。

9. まとめ|まず確認する3つのこと

  1. 就業規則を開く:名称を問わず、教育訓練に使える無給の休暇制度があるかを確認する
  2. ハローワークに事前確認する:加入期間と、進学予定の課程が対象になるかを確認する
  3. 人事に相談する:制度がなければ、助成金とあわせて導入を提案する
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