この記事の結論
働きながら大学院に進むという選択肢は、多くの社会人にとって「考えたことはあるが、調べ方が分からない」ものです。周囲に経験者が少なく、学校・制度・勤務先の情報がそれぞれ別の場所にあり、使える制度があっても知られていません。マスターズキャリアは、専門職大学院・修士課程への進学を検討する社会人のために、判断に必要な情報を一次情報にもとづいて、判断できる形で届けるメディアです。
大学院に行くかどうかを考え始めた社会人が、最初にぶつかるのは「行くべきか」という問いではありません。その手前にある「何を調べればいいのか分からない」という壁です。
どの大学院が自分の仕事に関係するのか。学費はいくらで、支援制度は使えるのか。仕事を続けながら通えるのか、休むなら会社はどう扱うのか。問いはいくつも浮かぶのに、まとまった答えがどこにもない。
私たちマスターズキャリアは、この「見えにくさ」を減らすために創刊しました。
1. 大学院という選択肢が見えにくい3つの理由
周りに、経験者が少ない
令和7年度の修士課程入学者80,452人のうち、社会人は7,075人でした(文部科学省「大学院関連参考資料集」(令和8年9月7日時点))。割合にすると約8.8%で、1割に届きません。
社会人向けの実践的な教育を行う専門職大学院では、在学生の約5割を社会人が占めています。ただし、専門職大学院の入学者は令和7年度で9,433人にとどまります(文部科学省「大学院関連参考資料集」(令和8年9月7日時点))。
大学院そのものの規模も大きくありません。学部在学者に対する大学院在学者の比率は、日本が10.3%(2024年)です。同じ統計でアメリカは20.8%(2021年、パートタイムを含む)、イギリスは41.3%(2022年、同)、ドイツは62.3%(2022年)となっています(文部科学省「諸外国の教育統計」令和7(2025)年版)。国ごとに統計の基準年と対象範囲は異なりますが、日本で大学院に在籍する人の層が相対的に薄いことはうかがえます。
職場で「大学院に行った人」に話を聞こうとしても、身近に見つからないことのほうが多いはずです。経験者が少なければ、経験談も流通しません。何年かかったのか、仕事とどう両立したのか、修了して何が変わったのか。進学を判断するうえで一番知りたい情報が、最も手に入りにくい状態にあります。
情報が、別々の場所にある
大学院進学に必要な情報は、1か所にまとまっていません。
研究科の内容や入試の情報は、各大学院のサイトにあります。学費を支える給付金は、厚生労働省とハローワークの管轄です。対象となる講座を探す窓口も複数あり、厚生労働省のリーフレット自体が、講座の探し先として「教育訓練給付金厚生労働大臣指定講座検索システム」「マナパス」「マナビDX」の3つを案内しています(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。
学校の情報と制度の情報を、読者が自分で突き合わせなければならない。これが、判断を難しくしている構造です。
使える制度が、知られていない
2025年10月、在職したまま無給の休暇を取って学ぶ人に、失業給付(基本手当)に相当する額を支給する「教育訓練休暇給付金」が始まりました。対象となる教育訓練には、大学院が明記されています(厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」)。
ところが、30日以上の教育訓練休暇について「勤務先に制度があるか分からない」と答えた労働者は63.2%にのぼります(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査 調査結果の概要」)。企業側でも、教育訓練休暇制度を導入する予定がない理由として「制度自体を知らなかった」が37.2%を占めています(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査 調査結果の概要」)。
制度はある。しかし、使う側にも、整える側にも届いていない。見えにくさは、個人の調べ不足だけでは説明できません。
2. マスターズキャリアが扱うこと、扱わないこと
扱うこと
マスターズキャリアの読者は、専門職大学院・修士課程への進学を検討している社会人です。記事は5つのテーマで構成します。
- 進学を決める:社会人が大学院に行く意味、判断の材料
- 職種から選ぶ:広報、人事・人材開発、経営企画、経理・財務、行政など、仕事から逆算した大学院の選び方
- 学費と支援制度:給付金、休暇制度、学費の考え方
- 大学院を知る:専門職大学院と修士課程の違い、学び方の実際
- 出願と研究計画:出願準備、研究計画書の書き方
扱わないこと
保育士や理学療法士など、資格の取得を主な目的とする課程は、このメディアの対象としていません。そうした学び直しには、すでに適した情報源があります。私たちは、学位を通じて仕事の専門性を深めたい社会人に、対象を絞ります。
3. 編集の約束
判断材料を届けるメディアである以上、材料そのものが正確でなければ意味がありません。マスターズキャリアは、すべての記事で次の4つを守ります。
1. 出典は一次情報とし、該当する箇所に明記します
法令、省庁の公表資料、公的統計、大学院の公式情報を出典とします。解説記事や個人ブログを根拠にはしません。出典は記事の末尾にまとめるのではなく、その記述の直後に置きます。どの数字がどの資料にもとづくのかを、読者が自分で確かめられるようにするためです。
2. 使える制度は、使える条件と制約まで書きます
「大学院に使える給付金があります」とだけ書くことはしません。受給の条件、手続きの期限、受給によって失うものまで書きます。制度の利点だけを伝えて、読者が申請の段階でつまずくことがないようにするためです。
3. 事実と意見を分け、推測で埋めません
公的資料で確認できないことは、確認できないと書きます。編集部の意見を述べるときは、意見であることがわかる形で書きます。
4. 制度が変われば、記事を更新します
制度は改正されます。記事ごとに資料の参照日を記録し、改正があれば内容を更新します。
読者のみなさんへ
大学院は、誰にとっても行くべき場所ではありません。行かないという判断も、十分に合理的な選択です。
ただ、その判断は、材料がそろった状態で下されるべきだと私たちは考えています。見えにくいから選ばない、のではなく、見たうえで選ぶ、あるいは選ばない。マスターズキャリアは、そのための材料を届けます。
マスターズキャリア編集部